入社時に提出してもらう書類

採用トラブルを回避するために

 就業規則の作成や労務相談の場面で、中小企業の経営者・幹部の方とお話いしていると、
 採用トラブルへの備えがやや甘いケースが少なくありません。

 入社時は、まだ会社と従業員の信頼関係が十分にできていないため、
 小さな誤解が大きなトラブルに発展しやすい時期です。

 そのため会社としては、
「この人は会社のルールを守れる人物か?」

 を見極める意味でも、労務管理に必要な最低限の書類を確実に提出してもらうことが重要で
 す。

採用選考時と入社時の提出書類

 1採用選考時に求める書類

  就業規則に規定する、採用選考時の提出書類の例は次のとおりです。

  ① 履歴書(3か月以内に撮影した写真付き)

  ② 職務経歴書

  ③ 健康診断書(3か月以内に受診したもの)

  ④ 成績証明書

  ⑤ 卒業証明書または卒業見込証明書

  ⑥ その他会社が指示する書類

 2採用決定者に提出してもらう書類

  採用が決定者した方には、一般的に次の書類を提出してもらいます。

  ① 雇用契約書および誓約書

  ② 身元保証書

  ③ 住民票記載事項証明書

  ④ 源泉徴収票(職歴のあるもの)

  ⑤ 年金手帳

  ⑥ 雇用保険被保険者証(職歴のあるもの)

  ⑦ 個人番号通知カードまたは個人番号カードの写し等
    (番号法に基づく本人確認書類) 

  ⑧ その他会社が指示する書類
  

  提出書類で確認すべきポイント

  ・雇用契約書を確実に締結していますか?

  ・会社の実態に合った誓約書を提出してもらっていますか?

  ・必要な書類を漏れなく案内できていますか?

  ・書類は入社日までに提出してもらっていますか?

   提出書類は、会社を守るための重要な労務管理ツールです。

   もし運用が曖昧なままであれば、明確にルール化し、確実に提出してもらいましょう。

身元保証書

身元保証書について

 採用時の提出書類の中で、特に誤解が多いのが身元保証書です。

 実務上は非常に重要な書類ですが、
 「どう扱えばいいのかわからない」という声が中小企業ではよくあります。

身元保証の目的

 身元保証には、主に次の2つの考え方があります。

  1.  賠償機能
      従業員が会社に損害を与えた場合の補填を目的とするもの。
  2.  人物保証
      
    人物保証従業員の素行や信用について保証するもの。近年はこちらが主流。

 保証期間について

 保証期間を定めない場合は、
 一般的に3年、長くても5年とされています。

 入社直後は信頼関係が十分ではありません。
 会社が教育を行い、従業員が会社の一員として成長していく期間でもあります。

 この期間をカバーするのが身元保証の役割です。

 よくある誤解

  • 「身元保証はずっと取り続けるものなのか?」
  • 「プライバシーに関わるので提出したくない」

    こうした誤解は少なくありません。

 しかし身元保証の本質は、
 会社と雇用関係を結んだという自覚を社員に持ってもらうことにあります。
 丁寧に説明することで、会社と従業員の信頼関係を築くうえでも重要な書類です。

 2020年4月改正 民法465条の2(極度額の定め)

  2020年4月の民放改正により、
  極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効となる可能性があります。

  入社時の身元保証契約は、
  従業員が会社に損害を与えた場合に本人と連帯して賠償する契約であり、
  この「根保証契約」に該当します。

  そのため、身元保証契約を締結する際は、
  賠償の上限(極度額)を必ず記載する必要があります。

  ただし、極度額を「2000万円」などと高額に設定すると、
  保証人の選定が難しくなる可能性があります。
  会社の実態に合った、現実的な金額設定が求められます。

  法務省の見解では、極度額の記載がない契約は無効になる可能性が高いとされていますが、 

  最終的には、裁判所の個々の判例によって決まります。

  実務上のポイント

  2020年4月以降の身元保証書は、
  会社の実態に合わせてどのような内容を記載するか、
  社労士など専門家と相談しながら作成することを強くおすすめします。

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